羊と虎


「遅くなったな」

「お疲れ様です!」

本田は7時半に近い時間に店に現れた。

とてもお腹が空いていた杏奈は、本田が来る前から料理を頼んでいたので、本田が席に着いた時には、料理が並べられていた。

「えと、飲み物はビールで良いですか?」

あぁと頷く本田を見て、直ぐにビールを注文した。

上着を脱ぎ、ネクタイを緩める姿は大人の色気があって、ドキリとする。

本田が恋愛対象外な杏奈ですらこうなのだから、本田を好きな子は目がハートになるんだろうなと、ぼんやりと考えていた。

「それで、なんの話だ」

いきなり本題に入ろうとする本田は、仕事モードと変らないのかもしれない。

「はい、話と言うのは、松田美優の事です」

杏奈も回りくどい事は好きでは無いので、聞かれた事に素直に答えた。

「松田の事?」

「先日、本田さん美優とぶつかりましたよね?」

「あぁ。」

「その時美優の隠してる趣味に興味を持って、付き纏ってますよね?」