羊と虎


「困ります。私、付き合っている人が居るので、連絡は出来ません。」

チラリと名刺を確認すれば、大手商社の名前があった。

『顔もソコソコだし、大手商社なら、自信あるんだろうなぁ・・・でも凱を見てからだと全てが色あせて見える』

「気が向いたらで良いから」

相手が必ず連絡してくると思ってるようで、強引に名刺を押し付けて去って行った。

ため息をついて名刺を眺める。

杏奈に声をかけてくるのは、大抵今の様な男性だった。

自分が大好きで杏奈の事はアクセサリーのように扱うタイプ。

「ごめーん!遅れちゃって!」

その声に、暗く沈みかけていた思考が途切れた。