羊と虎


「はい」

ドイツに居た頃からの趣味らしく、母用に調香するついでに作ってくれている。

市販の香水のように、香りがキツくなくて、母も私も気に入っている。

「へぇ。どんな匂いだ?」

そう言って山葉が近づこうとしたので、咄嗟に身をかわす。

鈴木の時と違って、山葉は斜め前に居るので避けやすかった。

「何で避ける」

「こ、こんな人目の有る所で止めて下さい」

周りを気にして、笑顔のまま話すが、顔は若干引き攣っている。

「なら後で嗅がせろ」

周りに聞かれていないかヒヤヒヤしながら辺りを伺うが、反応を見る限り聞こえていないようで、ホッとした。

『疲れる・・・』