羊と虎


「杏奈ちゃんには心当たり無いの?」

暫く考えてみて、一つだけ心当たりのようなものを思い出した。

「え?・・・うーん。お兄さんにお見合いとか勧められてるの断ってるからかな・・・」

「何で断ってるの?」

「あ~。ちょっと女性嫌い?いや、トラウマ?みたいなのが有るからかな?」

「でも杏奈ちゃんは大丈夫なの?」

「私は凱に迫ったりしないし・・・ねぇ」

今まで普通に話していたが、ふと気になる事を思い出して声を潜めた。

「ん?何?」

「お料理や裁縫や家事が好きで、可愛らしいものも好きな男性ってどんなタイプかな」

「オネェ!?」

「え!いや、分かんない・・・私の事友達と思ってるし、女性にトラウマがあったら、そっちに走ったりするのかな?」

複雑そうな顔をして言葉を紡ぐ。

「私もそっちにしか考えられない!」

キラキラした顔で嬉しそうに話す美優を見て、相談相手を間違ったかもと思った事は内緒だ。

杏奈自身が、凱の事を疑っていたのに、腐女子に意見を求めたのは不味かった。

もう、凱が女性に興味無いようにしか思えない。

そうすると色々納得する事がある。