羊と虎


「それで、今日は何の話なの?」

食事が終わって、デザートが来るのを待っていると、杏奈が話しかけてきた。

「うん。 それが・・」

歯切れの悪い返事をして、凱が視線を逸らした。

『話しにくい内容なのかな』

「話したくなかったら、話せるようになってからで良いよ」

「あ、いや・・。違うんだ。
兄に・・杏奈の事がバレたから・・・何か言ってくるかもって思って」

凄く申し訳なさそうに目を逸らしながら話す。

「あ、バレたんだ。
それで、私はどうしたらいい?
距離を置いた方がいい?それともこのままで良い?」

杏奈の動じた風に無い様子に、逆に凱が驚いた。

「驚かないの?」

「え?だってお兄さんにでしょ?一緒に居たら何時かは気付くでしょ。
それとも何か問題でも有るの?」

不思議そうにアイスコーヒーを啜りながら小首を傾げる。

本当に何とも思っていないようだ。