羊と虎


『確かに、どんな店でも構わないとは言ったけど・・・・・限度があるよね?!
本当に入ってもいいの?!』

格式高いホテルのレストランに案内された杏奈は、逃げ出したい気分だった。

『ここって、3つ星とかのお店じゃないの?私食べれれば何でもいいから分かんないけど』

入り口から豪奢な作りで、会社帰りにフラリと寄るような雰囲気は全く無い。

動きやすいようにと、いつもパンツスーツの杏奈は、この店の雰囲気には全く馴染んでいない。

入り口で固まってしまって、グルグル考えているうちに、支配人と思しき人物がやって来て凱と話をし始めた。

『やっぱり、帰ろうかな・・・。』

そう思い、足を後ろに引きかけた時、凱がこちらを見た。