羊と虎


「こっちもどうぞ!」

差し出されたガラスの器には結構大きめに切った桃とフォークが入っていた。

「・・ありがとう」

素直に受け取って、良く冷えた桃の缶詰を口にする。

「おいしい」

「良かったぁ。体調が悪い時、うちではコレが出てくるんです。
弱ってる時は本当に美味しくて・・・!あ、また喋りすぎた」

「ううん。いい家だね。うちは母が家に殆ど居なかったから、しんどい時は一人で寝てたよ」

髪をおろしていると、いつも見る凱とは違って、随分若く見えた。

「本当はおかゆが作れたら良いんですけど、私、料理苦手なんです」

あははは・・・と乾いた笑いをする杏奈。

「ありがとう」

いつもとは違う、柔らかな笑顔で礼を言われ、ドキリとした。