羊と虎


「凱、大丈夫ですか?」

後部座席に座らせようとしたが、そのまま奥に倒れこんでしまったので、後部座席に横たわった状態になった凱は、返事をしない。

「どちらまで・・?」

心配そうに聞かれるが、どうしようか迷ってしまう。

車道側から無理やり乗り込んだ杏奈は、凱の頭を膝に乗せ、手を額に当ててみた。

かなりの熱がある事は分かる。

『でも、風邪じゃないよね?病院?』

「凱、自宅の住所を教えて下さい」

一応聞いてみたが、やはり返事が無い。

このまま停車している訳にも行かないので、結局自分の家の住所を伝えた。