~私のせいだ・・・私のせいで王子は死ぬところだった・・・私があんなウソをついたから・・・~

人魚の世界に行きたくて王子は一人で泳ぎを練習しようとしてたのだろう。

まったく泳げない人間が荒れてる海に出るなんて自殺行為だ。

「タケルゥ~?」

高台のほうから女の子が走ってくるのが見えた。私はとっさにまだ開いていない海の家の裏に隠れる。

「タケル!!」

倒れてる王子を見つけて女の子はあわてて駆け寄る。

「タケル!タケル!しっかりして今パパとママ呼んでくるから」


そのうち大人たちがやってきて王子をタンカに乗せて運んでいった。その頃までには王子の意識もはっきりしてて一言二言話していたようだった。

その後自分がどうやって家に戻ったのかあまり覚えてない。

その日のうちに別荘の子供が早朝の海で溺れたが何事もなかったと大人たちが話してるのを聞いた。

たまたま助かっただけで、私は王子を危うく殺してしまうところだったんだ・・・

その事実があの頃の私には重かった。

あの日から私は海に近づくことも泳ぐこともやめた。