まだ朝日も昇りきらないくらいの早朝、私は急いで水着に着替えその上からお下がりのそのまたお下がりでもらった襟がデロデロのTシャツと短パンをはいた。

大きなバスタオルを1枚手に抱え、まだ寝てるお母さんを起こさないように物音を立てないようにそっと外に出る。

私は朝の海が好きだ。朝日が昇っていく美しい広い海を独り占めできるこの時間の海が好きだ。

私はTシャツと短パンを砂浜で脱ぎ捨て、海に入る。

一心不乱に泳ぐ。冷たい水の感触が気持ちいい。

まるで人魚にでもなった感覚で私はすいすいと泳ぐ。

夏になると私は早起きをしてこうしてよく早朝の海を泳ぐ。

私にとっては特別なことではなかった。

眠くなったら眠るのと同じように、おなかがすいたらご飯を食べるのと同じように、私はいつもこうして朝の海を泳いでいた。