「────では、在校生より祝辞を述べていただきます」



春。


真新しい制服を着た新入生たちが、体育館一帯を埋め尽くしていた。




去年の自分を思い出しながら、私は目の前のマイクを使って淡々とこの入学式の進行をする。



手元にこっそりと持っているカンニングペーパーを見ながら、次に言うセリフにため息を我慢した。




あぁ、また面倒なことになる。


私たちが新入生だった、去年のように。





「在校生代表。清秀(セイシュウ)高校生徒会会長。3年、瀬川藤 (セガワ フジ)」

「はい」




透き通った綺麗な低音が、体育館内に響いた。



上履きの擦れる音と共に、その人は新入生が一点に見つめるステージの上へと立つ。