「なーんでそこまで嫌うかなぁ…
俺、結構傷付くんだけど…」


わざとらしくがっくりと肩を落とす。

そんな健司を無視して雨の中を飛び出そうとした美加を健司が止めた。


「待てって。
風邪引くじゃん、雨すげーんだからさ」


掴まれた腕に優しい感触がして、慌てて美加はその手を振りほどいた。


「これ貸してやる。
俺のじゃ不満だろうけど、女の子に風邪引かせちゃまずいしさ」


手にしていたビニール傘を美加に渡すと


「じゃ、気ぃつけて帰れよ!」


と、雨の中に飛び込んで行った。


「いいよ…」


美加は健司の背中に叫んだが、健司は振り向きもせずに片手をヒラヒラ振り走り去って行った。

美加は健司に借りた傘を差し家路についた。


『濡れて帰って大丈夫かな?』


冷たい雨。

健司の事が気掛かりだった。