いつもと違う電車に乗り、スマホも取り出さずぼーっと景色を見ていた。
何かを考える余裕がなくって、今何かを言えば途切れ途切れになるか、まとまりのないことになるだろう。
降りる駅で開いていたドアが閉まる。二人は家で心配するのかな。もう後戻りはしないけど。遠ざかっていく駅名の看板を笑う。
それから目的の駅まで何回も止まる電車がもどかしかった。
そして私が望んでいた町が見えてくる。
停車してからドアの近くに立つのは私だけだった。
降りる人も少なく、待たずに改札へ切符を通せた。
記憶を頼りに慣れない町を歩く。田舎県のなんの変哲も無い町だけど、いつも新鮮に感じる。
あの緩やかな坂道に呼ばれているような気持ちがして、上へ上へ心が引き寄せられていく。徐々に急になって息が乱れても、白い息を吐きながら、歩むことを止めない。
幅のある道から曲がって細道に入り、足をとられそうになりながら坂道を下っていく。
塀に沿って並ぶ鉢を見つけ、駆け寄った。
やっぱり出てないよね。
そういえば、芽てある日急に出てくるものだったっけ?最近植物を育てたりしないから、すっかりわからなくなっていた。
私の中ではいつの間にか出ている印象が強い。
ならこまめに見ない方が種も芽を出しやすい?毎日見たりすると恥ずかしがって出てこれないのかな?
なんて、柄にもなくファンタジーなことを考えてしまった。
鉢を置いて、私は主な目的である家に向かう。呼び鈴を鳴らすか鳴らすまいか、決めかねて手が震える。
迷惑、だよね。
いや今まで散々迷惑かけてたでしょ。今更どうてことないって。
まだまともな私と迷惑な私がせめぎ合う。
そうしていると家主に気付かれた。
「何をしているんだ。そんなところで立ってたら冷えるぞ」
これには乾いた笑いしか出ない。
「今日は疲れてるようだな。まあお茶でも飲んでゆっくりしてくれ」
「……疲れてるように見えますか?」
ここに来てから一応は笑ってるのに……。そんなに顔に出やすいのかと思って、恐る恐る見上げる。
「ああ。今までで一番辛そうに見える」
そう言い残して台所に消える。
そんなに顔に出てるのか。そのまま家に帰ってたら絶対心配されてた。
本当のことを言えるわけないから、勉強頑張りすぎて疲れたとか言って笑ってただろうな。本当に?と聞かれたら、本当だよだからちょっと寝かせてって感じで突っぱねてた。
何かを考える余裕がなくって、今何かを言えば途切れ途切れになるか、まとまりのないことになるだろう。
降りる駅で開いていたドアが閉まる。二人は家で心配するのかな。もう後戻りはしないけど。遠ざかっていく駅名の看板を笑う。
それから目的の駅まで何回も止まる電車がもどかしかった。
そして私が望んでいた町が見えてくる。
停車してからドアの近くに立つのは私だけだった。
降りる人も少なく、待たずに改札へ切符を通せた。
記憶を頼りに慣れない町を歩く。田舎県のなんの変哲も無い町だけど、いつも新鮮に感じる。
あの緩やかな坂道に呼ばれているような気持ちがして、上へ上へ心が引き寄せられていく。徐々に急になって息が乱れても、白い息を吐きながら、歩むことを止めない。
幅のある道から曲がって細道に入り、足をとられそうになりながら坂道を下っていく。
塀に沿って並ぶ鉢を見つけ、駆け寄った。
やっぱり出てないよね。
そういえば、芽てある日急に出てくるものだったっけ?最近植物を育てたりしないから、すっかりわからなくなっていた。
私の中ではいつの間にか出ている印象が強い。
ならこまめに見ない方が種も芽を出しやすい?毎日見たりすると恥ずかしがって出てこれないのかな?
なんて、柄にもなくファンタジーなことを考えてしまった。
鉢を置いて、私は主な目的である家に向かう。呼び鈴を鳴らすか鳴らすまいか、決めかねて手が震える。
迷惑、だよね。
いや今まで散々迷惑かけてたでしょ。今更どうてことないって。
まだまともな私と迷惑な私がせめぎ合う。
そうしていると家主に気付かれた。
「何をしているんだ。そんなところで立ってたら冷えるぞ」
これには乾いた笑いしか出ない。
「今日は疲れてるようだな。まあお茶でも飲んでゆっくりしてくれ」
「……疲れてるように見えますか?」
ここに来てから一応は笑ってるのに……。そんなに顔に出やすいのかと思って、恐る恐る見上げる。
「ああ。今までで一番辛そうに見える」
そう言い残して台所に消える。
そんなに顔に出てるのか。そのまま家に帰ってたら絶対心配されてた。
本当のことを言えるわけないから、勉強頑張りすぎて疲れたとか言って笑ってただろうな。本当に?と聞かれたら、本当だよだからちょっと寝かせてって感じで突っぱねてた。


