「そんな悪口言ってくるような性格悪いやつは厳しく言わないとわからないの」
「厳しくって?どんな風に言ってやめさせるの?」
「それは状況によるけど……でも、言われた側の気持ちがわからないから平気で言えるんでしょ。だから、同じようなことを言えばいいの」
「それで終わらなければ?」
「続ける。場合によってはもっときついことを言うかもね。ぼっちとか、この前はブスとか言ってたんだから、男好きのブスくらいは言ってもいいかもね」
確かにわからないから平気で言えるというのはあると思う。けど、逆に怒ってエスカレートしたら?相手以上に酷いことを言えば、そこまでいうことないじゃん、と逆に被害者ぶって友達がそれに乗っかってくるかもしれない。
いじめっ子を懲らしめて終わりなんて簡単な問題じゃないんだ。
「そんなやり方なら、私は協力しない」
一度すると決めたのに、すぐに覆してしまった。それでも私はこの人についていけない。
「は?じゃあ由紀ちゃんは見捨てる気?」
「見捨てはしない。けど、攻撃的な手段を取るということは由紀ちゃんも巻き込むことになりそうだから……その前に、由紀ちゃんにこのことを伝えた?」
今日悪口を言われたあと、由紀ちゃんに話しかけた様子はなかった。
私は残っていた月子さんに目をやる。
「いえ……」
月子さんは首を横に振る。
「言うわけない。由紀ちゃんは絶対遠慮するから。でも本当は傷ついているはず。」
本人に無断で実行しようとしてるの!?計画の杜撰さに開いた口が塞がらない。
「もし実行したとして、相手がやめなければ悪口の応酬、泥沼の戦いになる。それが嫌だから、私は悪口を言わない方が得だと思わせることで、このクラスから悪口を消す」
「具体的にどうするの?」
「悪口を言うことで信用を失っていくと言うこと。自分も悪口を言われるかもしれないと疑われる。そして先生に知られれば評価も下がる。最悪の場合訴えられることもある。そして、たとえ言われた人に原因があっても、悪口という形で改善することはないってことを……」
「頭お花畑なの?」
月子さん以外が一斉にくすくすと笑い始めた。
「そんな方法、十年前から使い古されてるけど」
私の考えは羽化したばかりの蝶のように脆かった。頭から血の気が失せて、その場に崩れ落ちた。
「やっぱり浅野さんは何も考えてないんだね。いじめる方がなんのダメージも受けない、不公平な社会を否定しない人なんて、いじめるやつと同じよ」
降って来た言葉に誰も否定しない。
「先生の言う小手先のいじめ対策は無意味。昔のように、学校の作りを変える革命を起こさなければいけない。革命に浅野さんみたいな動かない人は要らない。反省して、もう何も言わないでね」
鍵と最後の言葉を投げ捨て、私を置いてドアを閉めた。
「厳しくって?どんな風に言ってやめさせるの?」
「それは状況によるけど……でも、言われた側の気持ちがわからないから平気で言えるんでしょ。だから、同じようなことを言えばいいの」
「それで終わらなければ?」
「続ける。場合によってはもっときついことを言うかもね。ぼっちとか、この前はブスとか言ってたんだから、男好きのブスくらいは言ってもいいかもね」
確かにわからないから平気で言えるというのはあると思う。けど、逆に怒ってエスカレートしたら?相手以上に酷いことを言えば、そこまでいうことないじゃん、と逆に被害者ぶって友達がそれに乗っかってくるかもしれない。
いじめっ子を懲らしめて終わりなんて簡単な問題じゃないんだ。
「そんなやり方なら、私は協力しない」
一度すると決めたのに、すぐに覆してしまった。それでも私はこの人についていけない。
「は?じゃあ由紀ちゃんは見捨てる気?」
「見捨てはしない。けど、攻撃的な手段を取るということは由紀ちゃんも巻き込むことになりそうだから……その前に、由紀ちゃんにこのことを伝えた?」
今日悪口を言われたあと、由紀ちゃんに話しかけた様子はなかった。
私は残っていた月子さんに目をやる。
「いえ……」
月子さんは首を横に振る。
「言うわけない。由紀ちゃんは絶対遠慮するから。でも本当は傷ついているはず。」
本人に無断で実行しようとしてるの!?計画の杜撰さに開いた口が塞がらない。
「もし実行したとして、相手がやめなければ悪口の応酬、泥沼の戦いになる。それが嫌だから、私は悪口を言わない方が得だと思わせることで、このクラスから悪口を消す」
「具体的にどうするの?」
「悪口を言うことで信用を失っていくと言うこと。自分も悪口を言われるかもしれないと疑われる。そして先生に知られれば評価も下がる。最悪の場合訴えられることもある。そして、たとえ言われた人に原因があっても、悪口という形で改善することはないってことを……」
「頭お花畑なの?」
月子さん以外が一斉にくすくすと笑い始めた。
「そんな方法、十年前から使い古されてるけど」
私の考えは羽化したばかりの蝶のように脆かった。頭から血の気が失せて、その場に崩れ落ちた。
「やっぱり浅野さんは何も考えてないんだね。いじめる方がなんのダメージも受けない、不公平な社会を否定しない人なんて、いじめるやつと同じよ」
降って来た言葉に誰も否定しない。
「先生の言う小手先のいじめ対策は無意味。昔のように、学校の作りを変える革命を起こさなければいけない。革命に浅野さんみたいな動かない人は要らない。反省して、もう何も言わないでね」
鍵と最後の言葉を投げ捨て、私を置いてドアを閉めた。


