起きたばかりのはっきりしない頭で、なんとなくケータイ小説のアプリを開いた。
寝起きだから内容も理解できないなと思い、ホーム画面に戻る。


「起きた?昼ごはん食べてないけどいつ食べる?」


向けるところを失った顔をお母さんが覗き込んだ。
そういえばお腹も空いてきた。


「もうそろそろ食べる」


「そう。じゃ、待ってて」


お母さんが髪を耳にかけ、だるそうに立ち上がった。


今日のご飯はなんだろう、と耳に意識を集中させる。
今電子レンジに何かを入れた。紙袋の音がしたからコロッケだ。その後スリッパのかかと部分が床を数回叩き、コンロに移動したとわかった。
間を置いてばちばちと強くはねる音がして、恐る恐るフライドポテトを投げ入れている様子を想像した。


今度は野菜を切る音がする。葉物を規則正しく切る音がする。
そして袋をガサガサと振る音で、サラダだなと思った。キャベツの千切りはスーパーで売られているものを使っていて、適当に盛っていく。


よし、目が覚めてきた。
いつもこたつの近くにかごに突っ込んでいるイヤホンを引っ張り出し、スマホに差し込んだ。


昼ごはんの答えが決まった私は、好きな音楽で料理の音を遮断した。