疲れたからスマホを手離し、横になったことを覚えている。


気付いたら私の足が、炙られているかのように熱くなっていた。一時間ほど寝ていたらしい。


だるい腰を上げ足を引き戻す。
猛烈に喉が渇いた。熱気から体を引き抜くと背中に鳥肌が立った。しかし長い間こたつに突っ込んでいた足はそれほど寒くない。


冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出し、コップに注ぐ。
水位が半分くらいまで下がるほどごくごくと飲み、こたつからスマホを取る代わりにコップを置いた。


こたつで寝たら頭がふわふわしてしんどい。せっかく軽くなったのに。
それにしても、倒れた後の方が体が軽いとは変な話だ。


安芸津さんの今までにない不思議な雰囲気を思い出した。
クラスの中の一人で良いからあんな風に落ち着いている人がいればよかったのに。


自分のことを棚に上げて他人の顔を批評したり、画面の向こうの人に暴言を吐いたり……。


反対に女子は平和だった。グループのようなものはあっても、人が自由に出入りしていた。
私と友達の一人はどのグループにも所属していない。けどグループなんてゆるい繋がりだから不自由はしない。


中学のときのグループは固いもので、同じ系統の人だけと付き合っていた。私と反対の存在である派手な人たちは近寄りがたかった。
今も中学以上に派手な子がいるけど、気さくで私にも話しかけてくれる。


すごいのは悪口をほぼ聞かないということだった。
バイト先の店長の愚痴はあっても同級生の悪口は言わない。
のに、男子の方は女子の顔を悪く言うのだった。


グループで対立したり悪口を言わないのって希少だし、ステータスだ。
クラス替えしたいとか言うけど、グループ同士の対立に比べれば顔なんて些細なことだ。
それに自分だって大してかっこよくないくせに女子のことブスとか言うのやめれば良いのに。


私は顔を悪く言わないのに、一方的にブスとか絶対付き合いたくないとか言われるのは不公平なんじゃと思ったこともある。


でも私一人が不公平と思ったところで、クラスの男子十六人の会話を制限することはできない。