私の不安をあなたが一番知っている

次の日学校に行くと、生徒会長解任の話題で持ちきりだった。


そして朝の会で正式に生徒会長の解任が告げられた。
生徒会長の代理は篤彦、副会長はハクに決まり、次の年は選挙の結果、ハクが生徒会長になった。


生徒会長を解任された俺に父は、会社は泰成に任せるとだけ言った。
俺のようなやつより泰成の方が社員に優しいだろうし、今はそれでよかったと思っている。


解任してすぐ、俺の選挙運動での違反も明かされ、その後篤彦と意見が合わなくなったハクは篤彦の違反も公表した。
悪い生徒会長の代名詞に篤彦が追加され、その代わりハクの株が上がった。


あんらとはあの日からずっと近付くことすら出来なかった。当然だ。


しかし卒業も迫った三月、あんらに後ろから声をかけると、逃げずに歩み寄って来た。


そして種が入った袋を手渡してきた。


これが私の気持ち。三月ごろ、人差し指の第一関節の深さに埋めて。


俺の人差し指を見つめたあんらは、そう言い残してすぐ去った。


問題行動が続き、上位の他校のレベルも上がったということで、疾風高校の進学クラスは2003年に入学した生徒を最後に新入生の受け入れをやめ、最後の生徒が卒業した2005年に廃止になった。
大学にいた元進学クラスの生徒によると、ハクも選挙の際のポスターの仕掛けがばれ、自分のことを棚に上げたとして最後の方は人が離れていったという。


その後俺は大学に行き、親の会社に就職して、なんとなく働いていた。
しかし何のために生きているのかわからなくなり、四年ほどで退職した。


退職後はこの家を買い、服や家具も全て買い替え、ここでひっそりと暮らした。


俺は人の望みがわかる、と言いながら、大事なときにわかろうともしなかった。
今まで望みを叶えてやったんだ、これくらい許される、俺は正しいと自分を甘やかしてきた。
だから大切な人にも離れていかれたのだ。


特別な力だって、必要なときに使えなければ意味がない。