私の不安をあなたが一番知っている

家に帰ってから怒りに任せて物を投げ散らかした。
隣の弟の部屋にも響いているだろうが、お構い無しでだ。弟は怖がりだが穏やかな性格だったから、きっと怯えていただろうな。


それでも怒りは収まらず、椅子にどすんと腰を下ろした。
そこに呼び鈴が鳴った。


弟が小走りで向かう足音が聞こえ、ドアが開く音がする。
間を置いてまた小走りで向かってきた。


あんらって人が来てるよ。
そのとき心に光が差した。怒りを忘れて玄関に向かう。


あんらは暗い表情で立っていた。
とにかく上がれ、と居間に案内し要件を聞いた。


今日早退したんだね。


あんらの口から触れられたくない話題が出た。俺は、だったらどうした?と、言った。


風紀委員の人は仕事をしているだけなのに嫌われて……それでもやめなかった。
生徒会は学校生活を過ごしやすくするのが仕事なのに、要望を聞くクラスに差をつけてはいけなかった!


俺は黙れ!と机に手をついた。
あんらだけは俺の味方になってくれると思い込み、勝手に裏切られたと思った。


あんらはため息をついて、消え入りそうな声で、もう戻れないんだねと言った。


別れたい。


決定的な言葉が俺の脳内で響く。
あんらにまで否定された。


俺はあんらの口を塞ぎ、自分の部屋に連れ込んだ。
鍵を閉め、撤回するまで出さないと言った。


どうしてまた出来っこないことをするの!?いつかばれてあなたは生徒会長解任どころの騒ぎじゃなくなる!今のうちにやめて!


それは無理だ。俺はあんらのことが好きだからやめない。
なぜわかってくれないんだ?


あんらは絶望に目を見開いた後、静かに涙を流した。
そんなあんらを椅子に座りながら眺めるという異様な状態で四時間が経過した。