まるで鏡を見ているように


 私と彼が抜けだした後は、ごく普通の和やかな街コンに戻っていった。


 私たちは、手短なファミレスに入った。本当はもっと近くにカラオケボックスなんかもあったけど、出逢ったばかりの男女にはちょっとハードルが高すぎた。

 ファミレスは案外人が少なくて助かった。時々来る店員さんたちが少し不躾な視線を向けてくるけど、それぐらいなら慣れたもの。

 居るだけだと迷惑になってしまうので、適当に飲み物を注文した。


「まずは自己紹介からする?」
「あぁ、そうしよう」


 私の言葉遣いを受けて、敬語から一気に砕けた口調になった。
 とてもさっぱりしていて、涼しげなイメージにはぴったりだと思った。

 向かい合ってお互い見つめ合う。さっきまではあまり気にしていなかったけど、やっぱり囲まれるだけの整った顔立ちをしていた。キラキラのオーラというか、人を引き付ける才能があるんだと思う。

 迷ってしまった。本当のことを言うべきか言わないべきか。
 いや、言わないべきなのだとは思う。街コンに参加してしまったし、嘘をついてきたんだからそれを通すべき。
 嘘をついたって悪いことはない。今後、会うことなんてないだろうから。

 迷ったのは時間にしてほんの一瞬だった。


「……私は相馬澪。参加しちゃったけど、ホントは17歳なの」


 てへっ、と軽く笑って、内心をごまかした。


 そう。どうせ今後会わないのなら、嘘をつく必要なんてない。
 本当のことを言ったっていいんだ。


 あと、この人の前では、何故だか、嘘をつきたくないって思ったんだ。