まるで鏡を見ているように


「あー、楽しかった」
「俺も。結構話し込んじゃったな」


 ファミレスから出て道を歩きながら言う。結局閉店時間まで居座ってしまった。


「ねぇ、最初はこんなつもりなかったんだけどさ」
「なに?」


 顔を合わせる。その端正な顔が月の光を浴びて、神々しさすら感じさせる。


「澪さん」
「澪でいいよ?」
「えっと、じゃあ澪」
「なに?」
「あのさ、今後も一緒に会わない?」
「え?」
「嫌なら断ってくれていいから!」


 どうしよう?今後は会わないと思って本名を名乗っちゃった。
 別に知られてもいいけど……そもそも初めてあった人とこれからも付き合いを続けるというのはいかがなものか。


「いいよ、楽しかったしね、黎夜」
「うん、、、」


 私はお返しの意味も込めて名前を呼んだ。
 黎夜はにっこりと笑う。なんだか嬉しいだけじゃない、複雑な笑顔。
 それが少し気になったけど、特に指摘はしなかった。


 今は、その時ではないと思ったから。