まるで鏡を見ているように


「俺は……」


 数秒の沈黙。綺麗な瞳が揺れている。
 何を迷っているのか、それはすぐにわかった。


「俺は佐倉黎夜。俺も、実は17歳」


 少し照れたような笑顔を浮かべる。

 ああ、ここに来て初めて彼の本当の笑顔を見れた気がする。
 出逢ったばかりだけど、純粋に嬉しかった。

 本当のことを言ってよかったと、単純だけどそう思った。


「そっちはどうしてあんなとこに参加したの?」
「ホントはお姉が行く予定だったの」
「やっぱり好きで来てたわけじゃないんだ?」
「うん、今日は代理。用事が出来ちゃったみたいで」
「苦労してんね。俺も兄がいるから、ちょっと分かる」


「まあ、慣れっこだから。身代わりなんて」


「それより、あなたはどうしてここへ?」


 思わず本音が出てしまった。ごまかしがてら、質問する。


「その、れ……俺のこと、知ってる?」
「へ?綺麗な顔してるけど、有名人なの?」
「いや、有名人ではないよ」


 苦笑する。私はなんか居心地が悪くなって縮こまる。


「有名校に通っててさ、時々モデルなんかもやってたりして」
「えー自慢でしょ」
「そうかも。まあ、ちょっとした嫌がらせってことかな」
「?わかんないなぁ」
「俺が言えるのはここまで、後は追加料金がかかります」
「有料なの⁉」
「なんてね」


 よくわかんない。隠したいことは誰にでもある、ってことだと思う。これ以上は詮索しないようにしよう。