by 宇佐美 優那

演奏は、楽しい。他人と合わせることは、もっと楽しい。でも、ライブが終わってから気がついたことがある。。
エロい曲はエロい。。
やらせてもらえない男の心情をハチャメチャに表した曲なわけだけれど、間奏にピアノのソロがあって、テクニックが問われるフレーズが節々あった。

練習の時には、テクニックに気をとられて気がつかなかったけど、かなりエロチックだ。つまり、その時の事を表現するわけだから、ちゃんと弾けたら、最強にセクシーなわけ。。

何で、こんなことに、舞台に上がるまで気がつかなかったんだろうと思うくらい。練習しているときは、テクニックに気をとられて、エロチックとは思いながらも、ピアノがエロとは思わなかった。歌詞や表現だって、大して深い考察もない。ひとみさんに習ってるときみたいに、「何を表現しているのか」といった表現の工夫もない。

ひとみさんは、上手い。蛇口を表現すれば、蛇口をひねる音がするし、扉が開く音や、時計の音、猫の鳴き声、助成の歌声、男性の歌声といったことも、目を閉じれば目に浮かぶようだ。

練習の時に、ライブの曲の表現するところについて、あまり深くも考えていなかったが、それが、突然、舞台の上で、楽譜が、楽譜の意味が私の中に入ってきてしまった。。

くまさんは、あゆみと二人で見に来てくれていた。あゆみは、ジャズチームが終わったら洋治と約束があると話していたけど、私は、くまさんと家に帰ろうと思ってた。気楽に考えてたけど、、ひとみさんも、くまさんも、私なんかよりずっと聞く耳持った人だし、曲が曲だけに、めちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。

恥ずかしくて、胸の奥がざわついた。体の奥が熱くなった。多分、顔が赤くなってると思う。。

松野さんの歌声で、ふと、われに帰った。音が何フレーズか飛んでいた。。1番決めなければならないところは、入れた。

舞台袖で、リュウジさんが待ってた。
「宇佐ちゃん、みやこ、最高!!」
リュウジさんは、汗をかいてしまった平林さんに、タオルを差し出していた。
「宇佐ちゃん、もしかして、緊張してた?」
「失敗しちゃった、、。」
客席から見えないと思ったら、緊張の糸が切れ、目に涙が滲んだ。。
「宇佐ちゃん、ストーップ」
リュウジさんは、ごそごそとポケット探ったあと、私の目元に、ティッシュを1枚そっと当てた。涙は、ティッシュに吸いとられて、肌に触れなかった。

「宇佐ちゃん、アラジンと魔法のランプのランプの妖精って、何の名前だっけ??」
と、リュウジさんは尋ねた。
分かんない。
「今思い出せないなー」

「思い出したら教えて。めちゃくちゃ盛り上がったよ。宇佐ちゃんも、みやこも、色っぽくて最高。」リュウジさんは、笑った。
「一緒に楽屋でようか?しおりちゃんたちは、もう行ったよ。」
リュウジさんは、言った。
「同級生来てるんだ。いろいろありがとう。」と、私は、言った。
「了解」と、リュウジさんは言って、目元の化粧だけ、少しなおしてくれた。

「リュウジ、ちょっとさ、裏に行かない方が良いんだけど、今日は、バイクで来てる??」平林さんは、ちょっと顔色が悪かった。

「来てるけど。貸せないよ。」
「駅まで、送ってもらっていい?今日は実家に帰るわ。」
「了解。俺もこのまま帰ろうかな。二人とも、また、俺も音楽まぜてよ。今回は、めちゃめちゃ楽しかった。」
と、リュウジさんは言って、平林さんの背中を押しながら、反対の手をヒラヒラとふって、舞台袖から出ていった。