by 宇佐美 優那
澤谷さんと二人で話をすることになった。
警備員の八代さんと、ひとみさんが、ずっと家から付き添ってくれて、澤谷さんのいる部屋にやって来た。

澤谷さんは、前回会ったときよりも、穏やかだった。

「優那、ごめんな。」
「私が悪かったんです。」
「そうじゃないんだ。俺、お前が未成年って知ってた。」
何て返事していいか分からなかった。
「お前に言わせないようにしたのも、わざとだ。そもそも、宇佐美さんのお嬢さんが、何歳かなんて、俺が知らないわけがない。」
澤谷さんは、そう言って、1枚の写真を見せてくれた。
それは、くまさんと私が家から一緒に出てくるところだった。
「熊谷義明。高校の同級生だろ。」
私は、絶句した。
「俺はさ、もともとは、記者志望だったんだよ。あれから、優那のことが、優那の本音が気になって、いろいろ調べた。」
「怖っ」
「お前の言うとおり。。怖いとおもうよ。最初、かっとなって、頭に血がのぼって、怖いやつだった。俺。でも、調べてみて、「やっぱりな」って思った。気がついてたのに、優那の口塞いでた。」

八代さんは、後ろで聞いてて、なにも言わなかった。

「お前は、気味悪がるかもしれないけど、俺にとっては、1番正しいやり方だったんだよ。ちゃんと本当のこと話してもらえないで、土俵にも上げてもらえないで、諦めもつかないだろ。だから、悪いけど、今回は、徹底的に熊谷のこと調べた。そいつ、15年くらい前にアメリカで有名になった事業家の息子で、3歳から日本で育てられてる。小学校の中学年で、ジャズピアノコンクールで賞もらって、小学校高学年で、柔道の全日本合宿に招待されたけど、音楽も柔道もぱったりやめてた。中学校入ってからは親父さんが作った3次元動画改良して、3次元動画のストリーミングの低コスト化に成功。これが、一流ジャーナルに取り上げられて、その道の人間の中では有名になってる。」
何言ってんのか分からなかった。
「澤谷さん、とにかく、私が悪いんです。」
「母が言ってたよ。「優那ちゃんは、「私が悪い」の一点張りだったっ」て。あの後、すぐは本当に頭に来て、浮気とか、責任とか、いろいろ頭の中めぐった。でも、そもそも、俺が勝手に優の口塞いで、大人しくしてるしかない状況に追い込んでたんだよな。。」
「私が悪いんです。。」と、私は、一歩下がった。
やっぱり、この人だめだ。

「優那、最期に本当のこと教えてくれよ。お前、熊谷とできてんの?」
「、、、そんなわけないじゃん。」
「お前が熊谷のこと好きなの?」
「好きだけど、恋愛感情じゃないよ。くまさん、暴力奮わない主義だから尊敬はしてる。」
「じゃ、熊谷がお前に惚れてんの?」
「知らないよ。そんなわけないじゃん」

澤谷さんは、笑った。
「コギャルだコギャル。子ども相手に、俺、何やってんだよう。。警察でも、何でも突きだしてくれていいよ。もう、2度と優に手だしたりしない。」澤谷さんは、ひきつったように笑っていた。
何か、破れかぶれな感じで、申し訳なく思った。でも、ここで態度を崩す方が、失礼なんだ。きっと。
「澤谷さん、本当にごめんなさい。私、澤谷さんとは、お付き合いはできません。でも、私が悪いから、先日の件をどこかに届けたりもしません。ずっと、お母さんのお仕事のパートナーでいてください。」
澤谷さんは、ちょっと目が覚めたように、笑うのをやめた。
「優、お前の連載、あの事言わなきゃならなくて、それで来た。」と、澤谷さんは、言った。
「お前さ、年に似合わず、良い文章書くから、俺がねじ込んだのは本当なんだ。お前の母親もそうだ。ただの教科書の依頼から、本気で売れる仕事に結び付いて、あたる仕事ってのが、俺らのやりがいなんだよ。本当に良い仕事させてもらえてさ。だから、優の事だって、優が思ってるような理由でごり押ししたんじゃない。あれは、俺の仕事のスタイルで、社内でだって、認められてる。売れれば勝ちの仕事なんだよ。」
「女使って仕事とったみたいに言われて、本当に嫌だったんです。。」
「それは、、違う。お前、俺のこと軽蔑してるだろうけど、俺だってプライド持って仕事してる。売れる本プロデュースすることにかけては、俺だって一流だ。。つまり、お母さん経由で原稿くれないか?」
「お母さんつてに返答します。」
「俺は、もう、優には会わないようにするよ。」
「分かった。」と、私は、言った。