一時間目が始まっても、
まだ少し机の引き出しからエッセイを出して、盗み読んでいた。



国語の授業。





祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。



あーあ、
そんなの、中学でもう覚えたよ。






後ろの席の、ヨシダが

私の肩をつんつんと叩く。



なに?





普段から無口なヨシダが、
重たそうな口を開いた。