八歳の夏。
その日で夏休みは終わりだった。
『ママ通信簿にハンコ押して』

『帰ってきたら押してあげる』

そう言い残すとママは大きなトラックに乗っていきそのまま帰ってこなかった。

ママ……
寂しい。
ママが怒るのが怖くて、いつも言葉にできないけれど………



ある日、久しぶりにママが帰ってきた。
『ママ……』

わたしが呼んでも振り返らない。
近寄っても私をみてくれない。

ママは自分のタンスをあさり、荷物をまとめるとそのまま行ってしまおうとした。

『ママっ……』

追いかけようとした私をパパが抱き締めて引き止めた。

『ママ……、ママ…』前が何も見えなくなるほどの、涙があふれた。
『もうあの人はママじゃない。パパとお前は捨てられたんだよ』
パパの声………
震えてた。
パパ…泣いた?

ママが玄関を閉めた冷たい音が響いた。
私は震えるパパに抱き締められながら止まることのない涙に溺れた。


ねぇ 幸せだった…? ママと出会い、私が生まれて…


ねぇ、おとうさん……