«海夏»
「バタンっっ!」

大きな音が出た。

翔流が扉を閉めた音。

いつもは優しい背中だが、さっきはとても怒って見えた。

なんで?

私は怒っている理由がわからない。

しかも今は教室に1人。

怖い。なぜだろう。今まで1人なんて慣れてたのに。

私は泣きながら翔流を追いかけた。

「かける。翔流!待って、置いていかないで、私を捨てないで、」

泣きながら嘆く。

翔流は驚いていた。

「わたしぃ。かげるがなんでおごってるのかわがんなくて。」

泣きながら言う私に翔流は抱きしめられた。

「捨てるわけないだろ。こんなに泣き虫でかわいい海夏を。1人にしてゴメンな。」

「ゔぅぅっかけるぅぅぅ…っつ…」

私は泣くことしかできなかった。

「もう泣くな。過呼吸になるぞ。ゆっくり息吸って…」

「もう大丈夫。もう泣かない。」

心配している翔流にそう言って泣くのをやめた。

「よし!泣き止んだことだし、帰るか!!!家まで送るよ」

「大丈夫だよ!1人で帰れる!!」

私がそういうと、翔流はムッとした顔をした。

かわいいw

「わかった、一緒に帰ろ!」

いつもは翔流はバイトだから一緒に帰るのは久しぶりだ。

せっかくバイト休みだから今日はのんびり休んで欲しかったけど…

私も一緒に帰りたいし!




────帰り道────

「どうして俺に隠してたの?」

翔流がそう問う。

私が翔流に知られなくない理由は、"病気の彼女"なんて重くてめんどくさいし、現に中学の頃の恋愛で失敗した経験がある。

その事を翔流に言うと翔流は、悔しそうな顔をした。

「重くないし、めんどくさくないし…」

翔流がそう言ってきた。

私はそれだけでも嬉しくて、心がドキドキしていた。

そんなこんなで、私と翔流のお互いの誤解というものはなくなった。