ちょうどその頃、教室内ではーー

女子達のヒソヒソ声が聞こえていた。

『「え?うそ!高吉くんが、龍咲さんの席で何してるんだろう?」

「花壇計画の打ち合わせだよ、きっと…」

「そっか」』


ーーーー

「龍咲?」

本を読んでいて聖火に気がつかなかった夏魅は、聖火の声で、はっ!として振り向いた。

「高吉くん…」


「あのさ…ちょっといい?」


「あ…う、うん…」


「委員会のことや、花壇のこと…ごめんな…任せきりにしてしまって…」

「え?…てゆうか…わたしと話してる…あ、…う、うん、そのことだったらいいの…わたしのほうこそごめん…無理矢理押しつけてしまって…」


「もう少ししたら手伝えると思う…」


「…あ、ありがとう…」

夏魅は聖火と話ができたこと、それだけで嬉しくて、瞳が滲んで来ていた。

聖火は夏魅のその滲んだ目を見て、優しい笑顔を彼女に投げかけた。


「三年前のことはもう、気にしなくていいよ…俺たちもう、大人なんだからさ…お前らしくないぜ!…ホラ!」


聖火はパンツのポケットから青いハンカチを取り出すと、夏魅に渡した。


「…ありがとう…」


「じゃあ、あのふたりをよろしくな!…
メシ…食べてくるわ…」


ーーーー


教室の隅で、その様子をじっと見ていた、桜依とその友達…

「どうしちゃったの?あの二人…できてるの?まさか…クソ!なんで夏魅のやつが高吉くんと接近してんの!ムカつく!…」

「桜依も参加したら?そしたら高吉くんと…」

「誰が!?夏魅と一緒なんて考えられないし!
それに、どうせ却下されるよ、あたしなんか!」


「どうしたの?桜依?…壊れちゃうよ!」


「クソ!…」


桜依は、持っていたダイアリーを握り潰していた。