廊下の階段の下で、壁のほうを向いて立っている雅さんがいた。


近くまで行き声をかけようとしたら、突然振り向き細い眉をつり上げながら言ってきた。


「ずいぶんと長かったわね、あなた、高吉くんのところで何をしてたの?」


「見てたの?」


「別に、そんなのいいでしょ…高吉くんと何をしてたのかって聞いてるのよ!」


雅さん…あなた…


本当のことを言うべきなのか、それとも、傷ついた雅さんに、これ以上のショックを与えないよう、うそを言ったほうがいいのかって、考えてしまった。

だって、雅さんがフられるところを見てしまったから…


「言えないことでもしていたの?…」

うそはいけない、やっぱり本当のことを


「上級生に頼まれたラブレターをセイカくんに渡してきただけ…」


「渡してきただけ?…まさか高吉くん、それを、受け取ったの?」


「うん…」


「うそでしょ?」


「今回だけって言ってた…」


「わたしのは拒否して、なんで上級生の人のを…どうして?」


雅さん…


「奈々瀬さんあなた、高吉くんとどういう関係なの?最近山代くんとも仲よさそうだし…」


「そ、そんな関係だなんて、お話するのが精いっぱいで、緊張するし…山代くんがかってに話しかけてくるから…」


「ちょっとまって!お話って?高吉くんと?
彼、よほどのことがない限りは話さないの、中学の頃からそう…その彼とお話って、
あなた達どうなっているの?」


「どうって言われても…なにもないし、隠すものもないし、私はただのクラスメイトって思ってる」


「ふ~ん…それから、高吉くんのことセイカって下の名前で呼ぶのやめてくれないかな!馴れ馴れしいし、ちょっとイラつくから!」


そう言って雅さんは行ってしまった。