あっ!


白いモフモフの毛でほとんど顏が見えないくらいの、犬のぬいぐるみらしきものが!


「?…」


更に近づこうとすると


「アンッ!」


と、吠えた! 動いた!


「うわッ! !… 本物の…ワンちゃん?」


ちょっとだけ後退りしつつ…


めっちゃかわいい!


私はそこにしゃがみ込んで、両手を広げた。


「おいで!」


「アンッ」


子犬は吠えながら私の胸めがけて飛び込んで来た。


抱き上げると、ペロペロと顔を舐め回してくる。


「ひゃっぁんッ! くひゅぐったい!ちょっ…」


とても小さくてかわいいワンちゃんだった。
でも、 なんでこんな所に?


辺りを見回してみても、私以外は誰もいない


「 きみ 迷子? なにしてるの?」


そのうち飼い主がくるのだろうか?


それとも…


違うよね


幸せになれるほうだよね


「お迎えがくるまで、ちゃんと待っているんだよ!」


「アンッ!アンッ!」


「ふふっ かわいい」


って、こんなことしてる場合じゃない!

たいへん!

そう、私、通学途中だったんじゃないですか!


「ごめんね、遊びたいけれど時間無いの、またくるから、バイバイ!」


ワンちゃんに約束をして、さよならを告げると、私はその場所から走り去った。


駅に行く途中、さっきのワンちゃんのことを考えていた。


首輪がついていたから大丈夫…

でも、迷子になっていたとしたら…

あんなところでひとりぼっちなんて…


かわいそう…