病院に搬送されていく中村巡査を
見届けてやっと表情を崩す横田。




その大柄の体に
平野が後ろからジャケットをかける。



そして平野は一言だけ声をかけた。





「お見事」





横田はうなずきながらも
なおも中村巡査を乗せた救急車が


走っていくのをずっと見つめていた。




空港を覆っていた虚構という名の雲は
払いのけられ


緊張を解かれた人々が


後かたずけを始めている。




日差しが差し込んでくる空港の中で
平野と横田はいつまでも


立ちつくしていた。