「俺は君に今、取引を持ちかけているに過ぎない」


「……取引ですか?」


「ああ。その通りだ」


この時点で、彼の持ちかけてきたその取引とやらを、私に断る権利などもはや初めから存在してなどいなかった。

”何でもします”と、彼にそう乞うたのは他でもない私自身なのだから。


「君は俺の容姿に興味がないと言ったな」


「……はい。あくまで思考が好きなので」


「ならば俺は、君のその探究心を満たす事を約束しよう」


「え、」


「その代わり君は、——俺が呼んだらすぐに来い」


それが、桜庭准教授もとい悪魔の様な男と私が交わした契約だった。






最大要因 fin.