いや、——これではまるで、この男からの呼び出しを喜んでいるバカ女ではないかと、自分の真面目さに呆れ返る。


「失礼します」


そろりと中に入ると、こちらなど一切見る事なく机に向かい作業を続ける、俺様何様桜庭准教授様の背中が見えた。

その背中を眺めていると突然、無感情な声が響く。


「コーヒー」


「、」


極め付けがこの単語で発される物言いである。


「(……まあ、いそいそと部屋の中に設置された簡易キッチンに近寄る私も私だけど。)」


難しい本ばかりが本棚に並ぶこの研究室には、コーヒーメーカーだけでなく、コーヒー豆を挽く為に用いるミルまである。