……って、違う違う。

今は莉亜の可愛さについてじゃなくて夏樹についてだ。

もう一人の幼馴染、桜井夏樹。

夏樹とは、幼稚園の頃から一緒にいる。

莉亜は私を通して夏樹と知り合った。

今はその夏樹を待っている。

だけど待ち合わせ時間を十分すぎても来ない。

遅すぎる。

「もう、先に行こうか?」

そう莉亜に提案した。

私たち3人は家も近い。

私の家の前には公園があり、その向こう側に莉亜の家がある。

そして、そこから数軒挟んであるのが夏樹の家。

ちなみに今いるのは私の家の前の公園。

つまり、夏樹の家が一番ここから遠いということになる。

だから遅くなるのは仕方がない、と。

いいや、そんなことは関係ない。

どうせ近くても遅いことは確実だ。

だってただ単に寝坊しているだけだし。


「うん、賛成ー!
ナツちゃんなんて置いてこー!」


莉亜がキラキラした目で私の提案に賛成した。

じゃぁ、行こう。

そう言おうと口を開いた。


「…はよ〜。あー、寝坊しちまったわ。
ふぁぁ〜、ねみぃ」


…私じゃない。


「あー!ナツちゃん、遅いよー。
遅刻しちゃうじゃん、バカー!」


…これも私じゃない。

さっき、寝坊したとかぬかした…欠伸までしやがった野郎が夏樹である。

というか、やっぱり寝坊したんだ。

わかってたけど。

そして、莉亜が言った『バカ』の言葉を特に気にする様子もなく、


「ワリー、ワリー」


と軽く謝っているクソ野郎。

少しは反省したらどうなんだ。

謝ればいいと思っているに違いない。

イケメンだからって何でも許されると思うなよ。

…そう、夏樹は莉亜と同じく顔が凄く整っている。

ブロンドに近い茶髪でゆるい天パ。

タレ目の二重。

サッカー部なのに、これまた莉亜と同じく色白な肌。

そして何を食べてそんなデカくなったんだと突っ込みたくなるほどの身長。

この前測ったら187センチだったらしい。

学年で一番高いと思う。

ピアスもしていて、全体的にチャラい印象しかないけれど、性格は全然違う。

まぁ、人たらしなのは否定出来ない。

無自覚なので余計にタチが悪い。


「もー!
ナツちゃんホントに悪いって思ってるー⁈」


あ、莉亜が怒った。

いつもならこのまま傍観しているんだけど、時間がない。

本当に遅刻してしまう。


「…莉亜、夏樹。
言い合いはそこまでにして早く学校行くよ」


言い合いをしている小動物と巨人に声をかける。

「はーい」


「あいさー」


後者の方の夏樹の返事にいらっとしたので、


「夏樹?
次遅れたら躊躇わずに置いていくから」


にっこりと笑って意地悪してみた。


「…はーい」


今度はちゃんとした返事をした。

反省してくれたみたいでなにより。