「…寒い」


まだ11月に入ったばかりだというのに、吐く息は白く染まる。

今年は例年よりもかなり寒いと天気予報で言っていた気がする。

…いや、言っていなかったとしても確実にそうだ。


「手袋した方がいいかなぁ」


そう呟いた次の瞬間、


「あっおいーーーっ!」


どーんという音がしそうなほどの勢いで、‘‘誰か’’が私の後ろから突進してきた。

そのまま勢いで前に倒れそうになったが、何とか踏ん張った。

その拍子に私の塩素で傷んだ茶髪が視界に入った。


…危なっ!

あと少しで顔面コンクリートで打つところだった。


「うぅ〜〜」


呻き声が聞こえる。

どうやら‘‘誰か’’は私の腰に手を回していて、踏ん張った時に私の背中で頭を打ったらしい。

でも、ひとつ言わせてほしい。

…私も背中痛い。

もう、仕方ないな。


「莉亜、そろそろ手放して?
あと危ないから突進して来るのはやめて」


そう告げると誰か…莉亜は素直に私の腰から手を放した。


「えへへっ。ごめんね、葵」


可愛らしく小首を傾げながら謝った、この美少女は成菜莉亜。

小学校に入学した時から一緒にいる幼馴染。

莉亜は可愛い。

100人中100人可愛いって言うと思うくらい。

色白な肌に桃色の唇と頰。

ちょこんとした小さい鼻。

パッチリとした二重の大きな目。

そしてそれを縁どるふさふさの長いまつ毛。

極めつきは腰まで伸びた艶のある綺麗な黒髪。

可愛い要素しかない。

それに加えて147センチという守ってあげたくなる身長。

モテないワケがない。


「葵ー? 大丈夫ー?」


このまま莉亜の可愛さに浸りたかったが、本人にそれを中断させられた。


「ナツちゃんさー、遅くない? まだ寝てるのかなー?」


平均よりも低い莉亜とは逆に、私は166センチで、女子にしては高めの身長。

当然莉亜が私を見上げる形になる。

上目遣い、可愛すぎる。