キーンコーンカーンコーン…
「おっしゃ、帰ろーぜー!」
「部活一緒に行こー」
「あのさ、今日一緒に帰らない?」
「龍くーん!一緒に帰ろー♡」

1日の授業が終わりクラス内ではいろんな声が飛び回っていた。
「美鈴ー。私部活行くね。バイバイ」
「あ、菜々美。頑張ってね!また明日!」
そう言って手を振って菜々美と別れた。

「ねぇ、美鈴ちゃんはなんか部活やっとるん?」
大輝くんが聞いてきた。
「うん。美術部だよ」
「そうなんや!せやから美鈴ちゃんの絵上手いねんな。ほら、そのノート。表紙の絵」
「あ、これ?そんなことないよ〜」
こんなこと言ったけど、正直少し嬉しかった。
「えぇなー。絵上手くて。俺、絵心全くと言っていいほどないねん」
そう言って大輝くんはあの顔で笑った。
「いや〜、いるいる。絵心ない男子なんていっぱいいるよ」

「それ、誰のことだよ」
声のした後ろの方を見ると陸也と新斗が睨んだような顔で立っていた。
「え。あ、いや、別に…」
「どーせ俺たちのことなんだろ。悲しっ!ってことで部活行ってきまーす。新斗行こーぜ」
「おう。絵心なくて悪かったな。じゃな」
「うん、バイバイ…」
あんなにいじけなくてもいいのに…。
「怒られちゃったね」
笑いながら大輝くんが言った。
「ね!そんな怒る事じゃないのに。心ちっちゃ」
また大輝くんが笑った。
「美鈴ちゃんとあの2人は仲良いんやね」
「えっ!うーん、そうなのかな?いっつも喧嘩するよ」
「いやいや、喧嘩するほど仲がいいって、言うやろ?」
んー、そうかもしれないけど…。
「私たちね、幼馴染なの。生まれた時からいつも一緒なんだ」
「へー!幼馴染かー!ええな。俺もな、前住んどったとこにはおったんよ。でも、美鈴ちゃんたちみたいな生まれたときから一緒ってわけやなくて、小1から仲良しっていうだけのやつやったけど」
そう言う大輝くんの顔は少し悲しそうだった。
「…どうかした?」
「え?あ、いやいやなんも。そろそろ、俺帰ろうかな。美鈴ちゃんはまだ残るん?」
「あ、うん。ちょっと用事終わらせてからお兄ちゃんと帰るの」
「そうなんや。頑張ってな。美鈴ちゃん、お兄ちゃんおるんやな。美鈴ちゃんの家族の話とか今度聞かせてや。じゃ、また明日」
「うん。明日ね。バイバイ」
大輝くんが教室から出てしばらくすると雪斗の声がした。
「美鈴ー。お待たせ」
「雪斗!ちょっと待って。まだ準備できてない!」
「ったく、今までなにしてたんだよ」
雪斗は呆れたように笑った。
「ごめんごめん。あと、少しやる事あるから、もう少し待ってて?」
そう言うと、雪斗は私を手伝ってくれた。

「あ、もうこんな時間」
時計を見ると5時前だった。
「ほんとだ。終わったろ?帰るか」
雪斗が、そう言って私たちは学校を出た。