私は教室を出て、急いで階段を下りていった。階段の踊り場に差し掛かると、
「キャッ!」
誰かとぶつかった。

「ご、ごめんなさい。前見てなくて……」
「あ、いや、こっちもごめん。って、あれ?美鈴ちゃん?」

名前を呼ばれたので顔をあげると、
「あっ、己龍くん!ビックリしたぁ」
「ごめんね」
ぶつかったのは兄・雪斗の親友で隣の家に住んでいる風丘己龍くんだった。

「あ、いやいや。私もよく見てなくて、ごめんね。日直忘れてて…」
己龍くんには幼い頃からよく面倒を見てもらっている。
「そっか。ごめんごめん」
そう言って手を差し出して起こしてくれた。

「美鈴ちゃん、学校楽しい?」
「うん!クラスにも馴染めたし、新斗たちと同じだから楽しいよ」
「そうなんだ。良かったね。俺もさ、涼介と同じクラスだから嬉しいよ」
「あっ。そっか。涼介と同じクラスかー。今年で最後だもんね、高校生。もう卒業じゃん」
「そうだよー。卒業だよ。ま、家隣だから会えるっしょ」
「確かに」
「あ、そろそろ時間だから行くね」
「うん。バイバイ」 
そう言って、己龍君は教室に、私は職員室に向かった。