…でも、其処からまなちゃんは帰ってこなかった。
僕と和恵が住んでる家は、自分の居場所じゃない…と感じ取ってしまったんだろうな…」


昇平さんの顔はガッカリとして寂しそうだった。
彼もきっと、愛花を心から大事に、そして愛しく思っていたんだろう…と推測した。


「まなちゃんの祖母が急逝して、あの子は僕達の元へ帰ってきた。
だけど、鬱みたいになっていて、食事も摂れなくて入院した。

毎日毎日カウンセラーと話して、何とか気持ちを切り替えて生き直した。


……でも、もう人と関わるのが怖いみたいだった。

二度も自分の肉親が急死して、生きることに怖さだけを感じてるように見えたよ。

僕が彼女に、そうじゃないと言っても信じては貰えないだろうと思った。

ぽっと降って湧いた様な男に、父親ぶって偉そうなことを言われたくないだろう…と感じた。

僕達はきっと、子育てに失敗したんだ。
だから、あの子がいつまでも心を開けないんだ…と悔やんだ__」