「有難いんですけど……応えられません」


ごめんなさい、と頭を下げる。
彼の気持ちは痛いくらいに感じて、ぎゅっと手を握り締めた。


「私には、真壁さんのような人は勿体無い。
もっと別に、似合う人がいると思います。

その人を見つけて幸せになって下さい。
私は檀家の一員として、貴方の幸せを願ってます」


どうかそうして、と願いつつ立ち去った。


写経した半紙を握ったまま母屋の玄関を出て、駐車場に停めてあった自分の車へと走り込んだ。


そのまま当てもなく走り出す。

目的のないドライブの行く先には、何が待ってるんだろうか___。