「あの家というのは?」


「『White moon』に決まってるだろ」


ムカつきながら言い返すと、「何だ」と父は納得する。

俺はそののんびりとした様子に「さっさと答えろ」と急かせ、相手は資料をデスクに置くと、手を組みながら訊き返してきた。


「お前はどうしてそれに興味があるんだ?これまでは何処に出向させても、そんな事など訊いてきたこともないだろうに」


珍しいな、と感想を述べる相手を睨み付け、「いいから早く!」と急き立てる。

親父は俺の機嫌が悪い意味が分からないらしく、肩を上げると組んでた手を開き、内線電話を掛けた。



「お呼びですか、社長」


父に呼ばれて入室してきた秘書の玉木さんは、俺を見るなり「お久しぶりです」と頭を下げる。
俺も彼に頭を下げ、「どうも」と礼儀知らずな返事をした。


「玉木、こいつが『White moon』の購入先を知りたいそうだ。悪いが調べて教えてやって欲しい」


親父はそう頼むと別の仕事があるから出て話せ、と言う。

玉木さんは、畏まりました、と一礼して、俺は親父に「また来る」と言って部屋を出ようとしたが。