「あのさ、聞いていい?」

「何でしょう?」

「お盆休みとかってあるの?」

「あーないかなぁ」

「そっか、ないんだ」

「海里さんあります?」

「海里で良いですよ?」

なんか他人行儀な呼び方が嫌で、いや、他人なんだけど、距離感?がなんか嫌だった。

まだ4度目で距離感も何もないんだけど、なんか彼女には名前で呼んで欲しかったんだ。

「えっ、でも」

「僕は少しだけかな」

彼女の戸惑いは無視して、質問に答えた。ちょっと強引過ぎるかな……。

「あーそっか。お店やってるとなかなか……でも毎年交代で夏休み明けたら秋にとるの。冬になる前に」

「何かあるの?」

「秋からはすごく忙しくて」

「そうなんだ」

「寒くなるとニット系の小物とかの注文が凄く増えてくるからほぼ休みなくなるの」

「そうなんだ」

「でもね?それが凄く嬉しいの」

「嬉しい?」

「だって私の作品を手にして、凄く幸せそうにしてるお客様の顔見てると幸せになるの」

「そうなんだ」

何とも言えない幸せそうな顔をして話してた。

きっと彼女の頭の中には、今までのお客さんの笑顔が見えてるんだ。

そう思えるような幸せそうな顔してた。