仕事終わりに本屋へ寄ると、買いたい本が売り切れだった為、取り寄せをお願いして帰えろうとビルを出たところで、一人の女性にぶつかったんだ。

ぶつかった拍子に手にぶら下げていた紙袋が破けて、雨の所為で少し濡れていた床に本や雑誌が落ちてしまったんだ。

弁償するって言ったんだけど、断られて雨が上がるのを待ってるって言うから、あまりにも申し訳なさすぎて紙袋をもらいにさっきの本屋さんへ向かったんだ。

なんか不思議な女性だった、ゲリラ豪雨で足止めされてるはずなのに、彼女はなぜかニコニコしててそれも楽しんでる感じだったから、それが何故か分からないけど気になったんだ。

紙袋を渡すとすごく喜んでくれたんだけど、紙袋の紐が指に食い込んでるようで、雨が上がるまで持ちましょうか?って言おうとしたら、まだ雨が降っているのに帰るからと、10時過ぎなのに“おやすみなさい”って挨拶してから帰っていったんだ。

おやすみってまだ寝ないでしょとか、心の中で突っ込んでみたけど、あー夜別れる場合は、そう言う挨拶もするか……走っていく彼女を見ながら考えていた。

せっかく新しく変えた紙袋も雨に濡れて、また破けちゃわないか心配だったし、どこに向かってるのかと思えば、向かいのパーキングだったみたいで、無事に車に乗るのを見てから自分も車を停めている駐車場まで走ったんだ。