彼女は何かを決意したように、大きく息を吐いて話し始めた。

「海里は理解してくれてる。そう思って安心しきってた。だから何でも話してきた。我慢してるとも知らずに、ごめんなさい」

「……ううん」

「あの日……誕生日の日の事、ずっと後悔してた」

「……」

「なんで会議に行っちゃったんだろうって……まさか会議が長引くなんて思ってなかったし、ケーキ買うのにあんなにお店探すことになるとは思ってなかったから、海里の生まれた大切な日なのに、間に合わなかった。凄く後悔してた」

「……」

「海里に言われた事は当然で、海里の優しさに甘えた私への罰だと思ったから、会いに来る勇気もなかった」

「……」

「だからこの気持ちは封印して仕事しようって決めたのに」

「……」

「海里を見たら……ダメだった。やっぱり好きで好きでどうしようもなく好きで……苦しくて……」

「……渚」

「本当は会いたくて、会いたくてたまらなかった。だけど、会いたいって言ってしまったら、変わってしまいそうで怖かった」

「……怖い?」

美月ちゃんが言ってた“怖い”ってのはこの事なのかな?