「どうなの?素直に言ったら、チョコを食ったの許してあげてもいいけど。」

「う…えっと…。」

「あー!チョコ食べたかったな!真理さんの貴重な手作り!俺、可哀想だなー!泣いちゃおっかなー!」

「あ、会いたかった…よ。」

「誰に?」

「…渋谷嫌い。」


顔を俺の胸元につけたまま、そんなアイのコトバ。


「嫌で結構。どうせあなたは俺のだもん。」

浮かれ過ぎて、そんな事を言いながら、身体を腕ん中に閉じ込めて左右にユラユラと揺らした。


もう…いっかな、言ってみても。
今ならこの人、いい返事くれるんじゃないかな。

忙しい最中、ずっと考えていた事。


「じゃあ、俺が恋しくてしょうがない真理さん?」

「……。」

「返事しろや。」

また身体をギュウッと引き寄せられて、期待通りの返事を貰える予感にどうしようもない位だらしない顔になったけど。


「一緒に住もっか?」

驚いて上げた真理さんの顔に更に笑いがこみ上げた。


あー…やってくれるわ、さすがは真理さん。


「真理さん、目がパンダになってる」

「え?!うそっ!あ、今日アイシャドウとマスカラ、ウォータープルーフじゃなくて普通の…ってそこじゃなくて…いや、そこもだけど!ああ、もう!」


軽くパニクった真理さんは、また俺の胸元に顔を埋めてしまう。


「ねえ、パンダさん。」

「…渋谷、嫌い。」

「いいつってんでしょ。どうせ、真理さんに断る権利は無いので。人のチョコを野郎と食った上に、パンダだし。」

「パ、パンダは関係ない!」

「うう…」と唸りながらも俺から離れ様としない真理さんがたまんなくて、キツくまた腕の中に閉じ込めた。


「…パンダって酒飲むんだね、俺知らなかった。」

「……。」

「嫌い?」

「…好き、です。」



机を並べて仕事をしていた頃は、すれ違っても隣に存在があった。

だからさ…帰る所を一緒にして、お互いの存在を感じられたら…今回みたいに真理さんが泥酔する事も無くなるかもしれないでしょ?


「真理さん、俺と住む?」
「…住む。」
「じゃあ、俺今日からめでたく、パンダと同居だ。」
「…夕飯、毎日全部、笹の葉にしてやる。」

まあ、俺が原因で真理さんがそんな風になるって、俺にとっちゃご褒美ではあるんだけどね。



〜One flake of the love(オマケのお話) fin.〜