課に横付けされているミーティングルームへ促され、ドアを閉めると真田さんは両手を組んで窓枠に凭れた。
「で?話って?」
「真理さんへの誹謗中傷メールを送った犯人についてです。」
言った俺に少し呆れた様に溜め息をつく。
「渋谷、その前にあいつだけ名前で呼ぶのはどうかと思うぞ。」
…このタイミングでそこにひっかかるってさ。
完全なる戦線布告ですよね。
受けて立ってやる。
「それを言うなら、真田さんもですよね。しかも呼び捨て。」
「俺は同期だし、一緒にやってきた時間が長いから。
でもお前は違うだろ?
お前だけそうやって懐いてると、周りから白い目で見られるのはアイツなんだから。」
“懐いてると”…。
随分バカにされてんじゃん、俺。
「公の場ではきちんと苗字で読んでますよ?普段は名前のが呼びやすいからそうしてるだけで。」
「『呼びやすい』ね」
「はい、おかげさまで、親しくさせて貰っているんで、休日に一緒に居られる程。」
真田さんの作り笑いが少しぴくりと歪んで、やっぱりかと少し息を吐いた。
…どちらが『見張りたかった』のかなんてすぐに分かる。
その位、真田さんは真理さんに”固執”してる。
「…真理は特別な『誰か』は作らないよ。ずっと一緒に居た俺が言うんだから間違いない。」
気持ちを落ち着けたいのか、白い大きな丸テーブルに収まっていた椅子を引いて座わる真田さん。
「で?特別な誰かになりたくて、なれなかったから、腹いせに嫌がらせメールを元カノに送らせたんですか?」
「……。」
腕組みしたまま押し黙り、ガラス窓から外のビルを眺めて俺とは目線を交わらせず、肯定も否定もしない。
「今から田所さんがこちらに来ます。彼女『木元さんに謝罪したい』と言ってましたよ。」
この人一体何考えてんだ?
もっと言い訳するのかと思っていたのに。認めるにしても、認めないにしても。
「…真理はメールを送った犯人を知っているのか?」
「今の所知りませんよ。あなたと話してから真理さんには話そうと思っていましたから。」
「…そうか。」
俺の答えに、一度深く溜め息を吐き出してから椅子から立ち上がった。
「渋谷、ご苦労様。」
は…い?
再び目線が交わった真田さんは、ミーティングルームに入って来た時の笑顔に戻っている。
「メールの犯人が分かって、課長の俺としても、少しすっきりしたかな。
田所さんも謝罪に来たと言う事は反省しているようだし、ここにもうすぐ来てくれるなら、話し合いも出来る。」
それとは真逆に眉間に皺を寄せる俺の肩に、ポンと掌を置くと、ドアノブに手をかけた。
「だてに、長い間、アイツと居たわけじゃないよ。少なくとも、お前よりはアイツの事をわかってる。」
完全に勝ち誇った余裕の笑みを返す真田さんに嫌な予感が瞬時に走る。
コンコン
真田さんがドアを押し開けるタイミングで鳴る、ノック音。
それは田所さんを連れて出勤して来た真理さんで色々と事のいきさつを真田さんに報告している。
「朝からごめん。今、田所さんが来ていて、三課の前でお待ち頂いているのだけど…」
「…ああ、大丈夫、わかった。」
真田さんの返答の後、俺に目線を移してニコリと微笑んでくれて、それから再びミーティングルームを後にした。
「田所さんたっての希望で、渋谷にも同席してもらう事になったけど。
『話し合い』に口を挟む様なら、退席してもらうからそのつもりでな。
大切な顧客の一人だから、くれぐれも失礼の無い様に。」
…『絶対に口を出すな』ね。
言葉の代わりにもう一度、変わらぬ余裕の表情を睨みつけた。
あんたが何を考えてるのかは知らないけど、思惑通りに事が進むと思うなよ。
俺を同席させた事、後悔させてやる。
「で?話って?」
「真理さんへの誹謗中傷メールを送った犯人についてです。」
言った俺に少し呆れた様に溜め息をつく。
「渋谷、その前にあいつだけ名前で呼ぶのはどうかと思うぞ。」
…このタイミングでそこにひっかかるってさ。
完全なる戦線布告ですよね。
受けて立ってやる。
「それを言うなら、真田さんもですよね。しかも呼び捨て。」
「俺は同期だし、一緒にやってきた時間が長いから。
でもお前は違うだろ?
お前だけそうやって懐いてると、周りから白い目で見られるのはアイツなんだから。」
“懐いてると”…。
随分バカにされてんじゃん、俺。
「公の場ではきちんと苗字で読んでますよ?普段は名前のが呼びやすいからそうしてるだけで。」
「『呼びやすい』ね」
「はい、おかげさまで、親しくさせて貰っているんで、休日に一緒に居られる程。」
真田さんの作り笑いが少しぴくりと歪んで、やっぱりかと少し息を吐いた。
…どちらが『見張りたかった』のかなんてすぐに分かる。
その位、真田さんは真理さんに”固執”してる。
「…真理は特別な『誰か』は作らないよ。ずっと一緒に居た俺が言うんだから間違いない。」
気持ちを落ち着けたいのか、白い大きな丸テーブルに収まっていた椅子を引いて座わる真田さん。
「で?特別な誰かになりたくて、なれなかったから、腹いせに嫌がらせメールを元カノに送らせたんですか?」
「……。」
腕組みしたまま押し黙り、ガラス窓から外のビルを眺めて俺とは目線を交わらせず、肯定も否定もしない。
「今から田所さんがこちらに来ます。彼女『木元さんに謝罪したい』と言ってましたよ。」
この人一体何考えてんだ?
もっと言い訳するのかと思っていたのに。認めるにしても、認めないにしても。
「…真理はメールを送った犯人を知っているのか?」
「今の所知りませんよ。あなたと話してから真理さんには話そうと思っていましたから。」
「…そうか。」
俺の答えに、一度深く溜め息を吐き出してから椅子から立ち上がった。
「渋谷、ご苦労様。」
は…い?
再び目線が交わった真田さんは、ミーティングルームに入って来た時の笑顔に戻っている。
「メールの犯人が分かって、課長の俺としても、少しすっきりしたかな。
田所さんも謝罪に来たと言う事は反省しているようだし、ここにもうすぐ来てくれるなら、話し合いも出来る。」
それとは真逆に眉間に皺を寄せる俺の肩に、ポンと掌を置くと、ドアノブに手をかけた。
「だてに、長い間、アイツと居たわけじゃないよ。少なくとも、お前よりはアイツの事をわかってる。」
完全に勝ち誇った余裕の笑みを返す真田さんに嫌な予感が瞬時に走る。
コンコン
真田さんがドアを押し開けるタイミングで鳴る、ノック音。
それは田所さんを連れて出勤して来た真理さんで色々と事のいきさつを真田さんに報告している。
「朝からごめん。今、田所さんが来ていて、三課の前でお待ち頂いているのだけど…」
「…ああ、大丈夫、わかった。」
真田さんの返答の後、俺に目線を移してニコリと微笑んでくれて、それから再びミーティングルームを後にした。
「田所さんたっての希望で、渋谷にも同席してもらう事になったけど。
『話し合い』に口を挟む様なら、退席してもらうからそのつもりでな。
大切な顧客の一人だから、くれぐれも失礼の無い様に。」
…『絶対に口を出すな』ね。
言葉の代わりにもう一度、変わらぬ余裕の表情を睨みつけた。
あんたが何を考えてるのかは知らないけど、思惑通りに事が進むと思うなよ。
俺を同席させた事、後悔させてやる。



