「………また、気づいてくれた……」
一向に離れようとしない磯村さんは、ふいにそんなことを言い出した。
気づいてくれた?
一体何がだ。
そしたら顔を上げ、俺の方を見る磯村さんの目は少し潤んでいた。
その上目遣いが………俺を誘惑する。
「私の存在に気づいてくれた人……」
きっと寝ぼけているのだろう。
夢の中とでも思っているのか?
「………へへっ……」
急にその潤んだ目を細め、ふにゃっと力なく笑う。
磯村さんに熱があるなんてことを、その時の俺は頭の片隅にすらなくて……
理性を保ちきれず、笑う彼女の唇にそっとキスをし、触れてしまう。



