と、思ったら。


突然左手に右手の指で何やら文字を書き出し、今度は目を閉じて深呼吸をする。


それの繰り返し。


それでわかった。


ああ、この女は新しい高校生活が始まり緊張しているんだと。


すると俺の視線に気づいたのか、女がこちらを向いた。


その時、その瞬間。


時間が止まったかのようにさえ感じられた。


自分の顔を隠すようにしている長い前髪から見え隠れする、くりっとした綺麗な瞳が俺を捉えた。


その綺麗な瞳は少し潤んでいるように見えた。


そしてなんとも言えない感情が俺を襲う。


これが一目惚れ、というのならそうかもしれない。


だけどこの時はまだ、好きじゃなくただ単に気になっただけかもしれない………。