「ありがとう」
そう言って手を伸ばし、たこ焼きが入った容器を受け取る。その時指先が水野君の手に触れた。
男らしいゴツゴツした手。触れたところが熱を持って、ドキドキが伝わってしまいそう。
パッと手を引いて離れると「そんなに俺のことが嫌なのかよ」と苦笑された。
嫌なんかじゃないよ、その逆だよ。
恥ずかしいから、好きだから、水野君の一挙一動にこんなにも感情が揺さぶられる。
辺りが暗くてよかった。明るかったら、真っ赤になっているのがバレるところだった。
「つーか、今日は浴衣なんだな。馬子にも衣装だよな」
そんな風に水野君が私をバカにして笑うから「うるさいなぁ」とむくれて返すことしかできない。
浴衣だけじゃない。髪型だっていつもと違うし、メイクだってしてるんだよ。きっと水野君は気づいてくれないだろうけど。
いいもん、大人しくたこ焼きでも食べるもん。
すると、隣から突き刺さるほどの視線が。
水野君がこっちをまっすぐ凝視しているのが見えた。
「な、なに?」
そんなに見つめられたら、恥ずかしいんだけど。
「もしかして化粧してる? いつもと違う感じがする」
まじまじと顔を覗きこまれた。水野君の整った顔にドキドキして、触れそうで触れない距離にハラハラする。