早く気づけよ、好きだって。


気づくと私は頷いていた。そして、瑠夏ちゃんを真ん中にして神社の中を歩く。人混みの中はぐれそうになりながらも、瑠夏ちゃんのオレンジ色の浴衣を目印にして進む。

だけど人が多くてゆっくりしか進めない。

周りの騒音もすごくて、人に酔ってしまいそう。身長が低いから余計に。瑠夏ちゃんも人混みにアップアップしていて、呑み込まれそうな勢いだった。

なにかを買うとなったら行列に並ばないといけないし、まだまだ時間がかかりそう。

花火は二十時からだから時間はたっぷりあるけれど、暑さと人混みに疲れてヘトヘトになりそう。

お祭りの雰囲気は好きだけど、人混みだけはどうも苦手。

「なんか食いたい物ある?」

「うーんとねぇ、たこ焼きとりんご飴」

「夏目は?」

「えっ? いや、私は」

「腹減ってないわけ?」

「いや、そういうわけじゃないけど。じゃあ、私もたこ焼きがいいな」

「買ってくるから、お前らはどっか座って待ってて」

「えっ? でも」

水野君だけに行かせるのは申し訳ない気がする。

「いいから、待ってろよ。一人の方がスムーズに動けるから」

そう言って、水野君はスルスルと人混みの中を縫って歩き出した。

だけどなにかを思い出したかのように途中で振り返り、「瑠夏! 転ぶなよ! それと、変なやつが声かけてきても、無視するんだぞ」と言ってから再び前を向く。