もし、もしも——。

留年するようなことにでもなったら、どうしよう。

勉強についていけなかったら——。

いくら努力しても、敵わなかったら——。

ダメだったら……どうしよう。


もしかして、浮かれてる場合じゃない?

もう少し自分の心配をしたほうがいいのかな。

私って基本的に頭悪いし……要領だってよくない。

なんとかならなかったら、どうしよう。

ううん、今からそんな先のことを考えたって意味がない。

先のわからない未来のことを考えるよりも、今が楽しかったらそれでいいんじゃないの?

いや、でも——。

高校は中学とちがって義務教育じゃないし、中学の時よりもっとがんばらなきゃいけない。

私にできるのかな。


なんて……ちょっとテンションが下がる。


「バカ、本気にするなよ」


ぷっと噴き出すような声とともに吐き出された言葉。

急に大人しくなった私を見て、蓮はクスクス笑っている。

笑うと目がクシャッとなって親しみやすさが増すけど、蓮は親しくない人の前ではあまり笑わない。


そして、誰彼かまわず心を開かない。

人当たりはいいけど、それは上辺だけだ。


「心配しなくても、桃なら大丈夫だろ」


「ほ、ほんと?」


「受験でもあれだけがんばったし、負けん気と根性だけはあるからな」


「そう、かな?」


たしかに受験勉強はがんばったけど。


「なんとかならない時は、俺を頼れよ」


蓮は意地悪だけど、本当に困った時や悩んだ時は、いつも私の力になってくれる。


「ありがとう、さすが蓮!」


蓮が味方でいてくれるだけで、とても心強い。