通りすぎて行く男子や女子の視線が麻衣ちゃんに寄せられる。麻衣ちゃんは慣れているのか、そんな視線をものともせずに堂々としていた。

「おはよう、須藤君」

麻衣ちゃんはチラッと蓮にも目を向けて笑顔を向ける。

「おはよう」

蓮もにっこり微笑んだ。猫被りキャラ発動中らしく、爽やかな笑顔を浮かべている。二人は同じクラスで、そこまで関わりはないみたいだけど、挨拶くらいはするらしい。

蓮のやつ。さっきまで上の空だったくせに、切り替えが早いんだから。

「私も一緒に行っていいかな?」

私と蓮の顔を交互に見ておうかがいをたてる麻衣ちゃん。私が迷わずに頷くと、蓮は「じゃあ、俺はあいつらと行くわ」と言い残して、偶然通りかかった男友達の輪の中に入っていった。

蓮はきっと気を遣ってくれたんだろう。

「はぁ」

学校に向かって歩き出した時、なぜか麻衣ちゃんは大きなため息を吐き出した。

「どうしたの?」

「いや、うん、えっとね……こんなこと、桃ちゃんにしか言えないんだけど」

恥ずかしそうにもじもじして、麻衣ちゃんはなぜか頬を赤らめている。

「実は私、須藤君のことが好きなの」

「えっ? 蓮が好き?」

思わず大きな声が出た。すると麻衣ちゃんは「しーっ!」と人差し指を立てて、周囲を気にしてキョロキョロと辺りを見回す。